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三重を旅する炊飯器、ジャーごと!松阪の食と歴史で、こころを満たすディープな魅力を巡る。



松阪といえば松阪牛だけじゃない!食の懐が深い町。そんな「美味しい松阪」を巡ります。今回はモグモグ系子育てママライター・ともーこさんが炊飯ジャーごと(通称ジャーごと)取材にうかがい、その土地の美味しい物を食べたり、町の歴史を辿ります。


ともーこさん:福井県出身・桑名市在住。食べることが趣味の一児の母。OTONAMIEでは身体を張った滝修行やグルメなどの記事を書く。他にも東海テレビのキュレーションメディアCUCURU(サイト終了)のライター経験有。OTONAMIEの広報も担当。

海苔好きじゃなくても気軽に楽しめる、海苔テラス。

松阪駅東口から徒歩約10分



テラスといえば「六本木テラス」、三重県民的には「三重テラス」、そして松阪にあるのは「海苔テラス」なのです。


コロナ対策をしつつイートインも可能


運営は三重漁連で、その敷地内の一角にあります。

海苔をふんだんに使った定食


海苔テラスではさまざまな海苔の商品が購入でき、レストランもあります。隣接するのり流通センターでは三重県内の海苔が集まり、競りが行われています。海苔の競り人も務める販売事業部のり海藻課の石倉正雄さんにお話を聞きました。海苔のプロフェッショナルである石倉さんが思う、三重の海苔の特徴とは?

石倉さん(写真中央)


石倉さん:木曽三川、鈴鹿山脈、大台ヶ原から山の養分が流れ込む伊勢湾は、海苔が育つ栄養が豊富。そして遠浅なので昔から海苔づくりが盛んです。海苔は網を張って養殖するのですが、海苔網がない時代から伊勢湾岸では海苔が食べられていたそうです。海苔には大きく分けて黒海苔と青さ海苔(アオサ)があり、日本の約6割のアオサは三重県で生産され、松阪もアオサの産地です。

ともーこさん:三重は海苔大国だったんですね。美味しい海苔、良い海苔の条件って何ですか?

石倉さん:黒海苔の場合は色の濃さ、風味や甘味、あと「食い切れ」といってパリっとした食感も大事です。火で炙ると香りが引き立ち、より美味しくなりますよ。アオサは用途によって評価の基準が違います。袋詰めされたものは団子状や粉々ではない形状で、深い緑色だと相対的に香りが強く良ししとされます。佃煮に使う場合は早い時期に収穫したものだと溶けてしまうので、しっかり育てた方が好まれます。あと海苔は海の野菜といわれるほど、食物繊維、たんぱく質、ビタミンなどが豊富です。

和食の朝ごはんには、海苔が添えられていることが多い。さらに三重の沿岸部ではアオサの味噌汁もよく食べられています。島国日本の貴重な栄養源である海苔を朝食で頻繁に食べるのは、健康面でも理にかなっているのではないでしょうか。
ジャーごと実食用の高級黒海苔とお土産を購入し、向かったのは伊勢湾。


海の恵みを、潮の香りを感じながら実食。


松阪市の東側一帯は、風光明媚な伊勢湾を望みます。海苔が育つ海で、潮の香りを感じながらのランチタイム。そんな贅沢なシチュエーションがたのしめる、ジャー映えスポットに到着しました。


海苔の話を聞き、海苔中心のおにぎりを作るというともーこさん。火をおこして海苔を炙ることはできないので、お日様の光で温め中。

ともーこさん:黒い!透けない!いつも食べていた海苔と存在感が違います。

それでは実食。


ともーこさん:「磯の香りーーー!」って叫びたくなるくらい、香りがすごくいいです。恵みの海に感謝したいです。

お味はいかがでしょう?

とこーもさん:パリっとした食感がありながら、厚みがあるのでご飯に馴染んで美味しいです。美しい海と海苔の香りに癒されます。

海苔テラスで人気の「焼海女のり」も実食。


自然とその恵みをたのしみ、続いて大地の恵みをいただきます。


大地の恵み、大豆は甘い!


うかがったのは大豆や豆腐・味噌など大豆の加工品を生産販売する野瀬商店。対応してくれた野瀬寿代さんにお話を聞きました。

野瀬さん(右)



野瀬さん:大豆は300種類以上あるのですが商品に使っている嬉野大豆は、三重県固有の在来種であり江戸時代から栽培されていた「美里在来」の大豆から生まれた品種です。脂質が低く糖度が高いので、加工すると甘味や旨味、そして風味も楽しめますよ。



予約販売(要予約・お電話にて)をしている豆腐「極み 寄せ豆腐」を購入。豆腐作りの工程で通常では、にがりで固めたあと殺菌と冷却を行いますが、「極み 寄せ豆腐」は殺菌冷却をしていないので大豆の本来の味が引き立つといいます。

ともーこさん:ごはんを作るときに気になっていたのですが、豆腐は水で洗った方がいいのでしょうか?

野瀬さん:洗わなくても大丈夫ですよ。一緒に入っている水は、豆腐の旨味を吸っているのでお味噌汁に使ったら美味しくなります。

豆腐ドーナツ


有益なライフハックも入手したところで、視界に入り気になるのは豆腐のドーナツ。嬉野大豆の甘味を活かし、砂糖不使用で人気の品なのだとか。こちらも購入して、青空の下、近くにある広場でいただくことにしました。


ともーこさん:豆腐が甘い!そして茶碗蒸しのような、なめらかな食感。スイーツみたいで贅沢な気分になります。

続いてドーナツの味はいかがでしょうか?


ともーこさん:プニプニでもちもち。砂糖を使っていないのに優しい甘味があり、自然な大豆の風味もいいですね。

海と大地の恵みで口福感の余韻に浸りながら、次は歴史散策へ。


国道の一筋横には、旅情をくすぐる歴史街道。


伊勢市への道中に位置する松阪市は昔、大勢のお伊勢参りの参拝者で大変賑わいました。今回は情緒ある伊勢街道の町並みを散策。

六軒追分にある道標を説明する中村さん(右)。


奈良に繋がる初瀬街道と伊勢街道が合流する、六軒追分から近鉄松ヶ崎駅まで、六軒、市場庄、久米エリアを巡ります。ご案内いただくのは、市場庄や六軒町などの歴史・文化の語り部の会「格子戸の会」会長の中村文恵さん。


スタート地点の六軒は江戸時代にはたくさんの旅籠や木賃宿があり、参拝者をもてなす宿で使われていた講看板が磯部屋利吉の軒先に展示。レトロな看板から当時の賑わいを想像しつつ、歴史を感じる古民家を眺めながら、六軒から市場庄へ歩きます。

ともーこさん:どこかで見たことがあるような建物ですね。

手前が妻入で、奥が平入。


中村さん:伊勢市のおはらい町の町並みに似て屋根が三角に見える面に出入り口がある「妻入」の町家が市場庄には多く、屋根がギザギザに並んだ町並みが特徴です。地区のお年寄りは「伊勢神宮の社の『平入』に遠慮して『妻入』にした」といっています。

それにしてもおはらい町などの町並みと違って木戸から覗く広い敷地が印象的。この地区は農業が主産業で昔は木戸を大八車が通りモミを庭に干したりしていたそうです。情緒を醸す格子は明治時代に付けられたもの。


中村さん:格子の木の角が丸くなっているでしょ。お盆やお正月の前には格子戸を磨くのがお嫁さんの仕事だったそうですが最近では夫婦で磨く家もあります。冬場は指先が凍てつく大変な作業なんですよ。家によって格子のデザインが違うのも見どころです。


街道から少し外れて100mほど脇道を行くと「忘井」があります。古代から南北朝時代までの約660年間にわたり天皇に代わって伊勢神宮に仕えるために未婚の皇女から「斎王」が選ばれました。斎王は天皇が代わるまで都には帰れませんでした。都から斎宮(明和町)まで斎王群行と呼ばれる5泊6日の旅の最後の日にこの忘井で休憩をしたといわれています。1110年第49代斎王に同行していた官女・甲斐(かい)がこの忘井で「別れゆく 都の方の 恋しきに いざ結びみむ 忘井の水」と詠んだと伝えられています。(忘井の場所については他説あり)


久米地区の途中、道が大きく曲がり田んぼが広がって視野が開け、遠く山々が望めます。そんなのどかな風景に映える、お堂や石碑。


ともーこさん:田舎でこのようなお堂をよく見かけるのですが、ここは何を奉っているのですか?

中村さん:民間信仰でこのお堂は庚申さん、丸い石碑は山の神を祀ったもので、常夜灯や石標も並んでいます。

庚申信仰では、三尸(さんし)と呼ばれる虫が人間の体内にいて、60日に一度の庚申の日に人間が眠ると体内から抜け出し、天帝(神)にその人間の罪悪を伝え、神は邪鬼に命じてその人に罰を与えるという教えがあるそうです。そのため庚申の日は、人々が集まり寝ずに夜を過ごしたそうです。

中村さん:集落の外れにこのようなお堂や石碑があるのは、恐らく邪気や悪いものが集落に入らないように守る意味合いがあるのだと思います。


最後に訪れたのは南北朝時代から続く名家・舟木家の長屋門です。


江戸時代に造られた美しいなまこ壁が特徴。馬に乗ったままでも通れる高さで迫力もあります。舟木家は南北朝時代から続く名家で、江戸時代に造られた長屋門には舟木家の2つの紋が掲げられています(個人宅のため公開されていません。外観のみご覧ください)。

伊勢街道のすぐ横を走る交通量の多い県道や国道


今回巡った伊勢街道は、JR紀勢本線と近鉄山田線の間にある道。私は普段よく使う鉄道の横に、歴史や文化の痕跡が残り、情緒的な町並みがあることに少し驚き、当時の伊勢街道に思いを巡らせました。

中村さん:昔は今日巡った伊勢街道から遠浅の伊勢湾が見渡せたそうです。田畑が広がる中を街道が通り、遠くに海を望む、そんな幻想的な場所だったんですね。


ナビゲートいただいた中村さんとは駅でお別れし、今夜のおかずを調達するため肉の直売所へ。


おうちでもたのしめる鶏焼き肉。暮らしを旅しよう!

コンビニの看板に肉!


お肉の直売所はJA全農みえミートが運営していて、朝加工した精肉などが並びます。松阪牛をはじめ、伊勢うまし豚、伊勢赤どりなどのブランド肉や加工品も直営価格で販売。

岩塚さん(左)


加工事業部加工品販売課の岩塚大知さんに聞けば、土日の特売は特に人気で、年末には行列ができるそうです。陳列された肉を眺めるともーこさん。

ともーこさん:肉が輝いていますね。松阪牛100gが800円台、100gの大きな和牛コロッケが100円とお値打ちですね。


ともーこさんは、以前OTONAMIEでも掲載した記事「肉・白飯・ビール・最高!!松阪市民の鶏焼き肉愛と味噌だれへのこだわり」を家でもたのしみたいと、タレに漬け込んである「松阪鶏焼き肉」と「牛ホルモン」を購入。

今回初めて松阪を巡ったともーこさんに、感想を聞きました。

ともーこさん:お腹も旅情も大満足です。毎日子育てや仕事に追われていますが、時には「こころが満たされる」ことも大事だなと思いました。その地の暮らしや、生活に溶け込んでいる歴史ある街道など、観光地化されていないところを巡ると、新しい発見があって楽しかったです。またお腹を空かせて、松阪を巡りたいと思います!


あなたにとっては何気ない日常も、誰かにとっては魅力的に映っていることがあります。日々の暮らしや身近な地域で「いいな」と思える風景を、こころのシャッターで切り取りませんか。歴史や自然を感じながら食を巡る小さな旅は、こころがワクワクして元気になっていくようです。






【取材協力】

海苔テラス
松阪市中央町465-1
tel 0598-51-1556
hp http://www.miegyoren.or.jp/gourmet/seafoodmap/terrace/

野瀬商店
松阪市嬉野権現前町775
tel 0598-42-2521
hp http://ureshino-toufu.com/

格子戸の会
松阪市市場庄町483-1
tel 0598-56-2493

お肉の直売所
松阪市市場庄町1164-1
tel 0598-56-9512
hp http://www.miemeat.co.jp/chokuei/index.html


【タイアップ・記事制作】
三重に暮らす・旅する
WEBマガジン OTONAMIE

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