県外へのお出かけを自粛するようになってすっかり久しい。
近場をあちこち散策してはいるけれど、やはりどこか物足りない。
三重で暮らすようになってもう12年。何か所かで暮らしたし、何か所かで働いた。子どもが産まれてからはあちこちお出かけもしたし、なんだかずいぶんと「知ったような気」になっていたらしい。
この一年で、もう行くべきところには行ったと、勝手に思っていた。
まだまだ知らない三重があるというのに。
ベルファームから徒歩3歩?!
今回訪れたのは松阪市美濃田(みのだ)地区。
松阪農業公園ベルファームの近く、と言うとピンと来る人も多いのでは。
ベルファームの東側の駐車場から、道をはさんでほんの3歩くらい。
この柱が目印。
前を通ったことがあるけれど気にしたことがなかった、という人もいるかもしれない。
この柱がすべての入り口。
なにがあるのかワクワクのショートトリップのはじまりはじまり。
「美濃田大仏への竹林街道」この柱が目印
小道を抜けて、てくてくと
小道の先にどうやら大仏と竹林があるとのこと。
美濃田町自治会の方にアテンドしていただいて、小道を進む。
ハナモモが竹林への道をアテンドしてくれる
小道を抜けると、近くに幹線道路があるとは思えないような田園風景が現れた。自治会の方が植えたというハナモモを辿ってさらに数百メートル進むと、竹林らしき入り口が。
入り口からただならぬ迫力。
あれ、私ついさっきまで、あのメルヘンパークもとい、ベルファームの駐車場にいたよね?と不思議な気持ち。あの小道は異次元へのトンネルだったのかしら。
ここはもともと、雑木林が竹藪になった場所。
年々竹藪の手入れをする人がいなくなり、長い間荒れる一方だったそう。そこに手を入れたのが、美濃田町の有志のみなさん。重機を入れて、整備をし、今では趣のある竹林へと大変身した。
一歩足を踏み入れると、幻想的な静けさに包まれる。
暑い日だったにもかかわらず、心地よい風が通り抜け、竹が日の光を遮り、涼しいくらいだった。
上を向くと竹が空を切り抜いて、眩しいアートをつくっていた。
ここがどこか忘れてしまうほど、見渡す限りの竹。つい3時間ほど前に慌ただしく卵を焼いて、子どもたちを学校へ送り出したのが遠い昔のことみたい。
どこかうんと遠くの、風光明媚な観光地にやってきた、そんな気持ちになった。
しばらく歩いていると鳥の声の向こうに、涼やかな音。
音を辿って歩いて行くと、あった。風鈴だ。
ここもやはり、地元の有志の方々のアイディアでつくられた場所。もちろん整備も有志の方たちが行った。すごいエネルギー。
風鈴の透き通るような音を聞きながら、竹を見る。それだけのことがとても贅沢だ。
テーブルの上には蚊取り線香(親切!)と雑記帳が。
開いてみると、そこには訪れた人たちの足跡があった。
昨今の情勢で県外への旅行がなかなか叶わない、そんな時にここへ来られてよかった。という声が多くあった。
竹林街道にある石垣。ここにはお城があったそう。
敏太神社(ミヌダジンジャ)で少し休憩
竹藪を抜けると、かわいらしい七夕飾りが出迎えてくれた。
今度は七夕飾りを辿って歩くと、大きな神社が。
敏太神社という地域の氏神様をお祀りする神社。
大きな池で悠々と鯉が泳いでいた。
せっかくなので、ご利益を頂いて帰ることに。
来年遷宮を迎えるとのことで、着々と準備が進んでいる。
そして、敏太神社のすぐ隣には美濃田大仏殿も建てられている。
三重県で大仏様が拝めるのはとても珍しいのだそう。
美濃田大仏殿にご挨拶
大仏殿の隙間から見上げると、なんだか胸がどきりとした。
扉一枚を隔てた向こうに、荘厳な空気が満ちているのを感じる。胸の奥の心地よい緊張に、背筋がピンと伸びるような心地。
大仏殿を管理されている真楽寺にもご挨拶をすませて、休憩がてら少し周囲を散策。
竹林、神社、大仏殿、お寺。短い距離の間にいろんなものを見て、ちょっとした観光地気分を味わった。
その名も「大仏うどん」
満足感を味わいながら歩いていると、ビビッドな看板が。
手打ちうどんとカレーが自慢のお店「美ノ田」
眩しいイエローで「営業中」とのことなので、お邪魔することに。たくさん歩いてお腹も減っているし。
サーフボードが目をひく
古式ゆかしいお茶屋さんみたいなお店が登場するかと思いきや、思いのほかファンキーなムード。嫌いじゃない。
店内にはずらりとサーフボード。FM三重のラジオを聞きながらメニューを見る。
ホルモンカレーうどんが人気とのことだったけれど、「大仏うどんで」。
大仏うどん、だ。ネーミングがよすぎるし、なんと言っても全部乗せだ。大仏うどんには「全部」乗っているらしい。
元々はサーフショップを兼ねた、仲間内で集まれる場所を、とつくられた場所だったのだとか。
様々な紆余曲折を経て、今はうどん屋さんになり、県内各所からお客さんがやって来ている。
全部乗っているので当然あられだって
なんと!!あられ!!!
あれ、あれだ。三重県にむかしむかしから伝わる、あられの大胆な食べ方、あられ茶漬けを踏襲したうどんがここに。
ちなみに私はあられ茶漬けを三重県立博物館の展示でしか見たことがない。これはあられ茶漬けではないにしろ、限りなく近いもの。現物を前に感動してしまう。
さっき大仏様を見て感動したのと同じ胸で、汁につかるあられにも感動できる。私はそういう仕様で生きている。
店主の手打ちだといううどんもコシがあってとってもおいしかった。お出汁があられの芳ばしい香りを引き立てて、食欲をそそる。
ふやけたあられはお雑煮のお餅によく似ていて、お出汁との相性にも違和感がまったくない。
あられ、汁物によすぎるという結論だった。
満たされたお腹を抱えて帰路に就く。
ベルファームで小旅行のしめ!
竹林、美濃田大仏殿へ行く際は、ベルファーム東側の駐車場を利用させていただけるとのこと。
と、帰る前に少し、デザートがほしいお年頃。
あたたかいおうどんを頂いたので、今度は冷たいものを。
ガーデンカフェルーベルにてかき氷を頂いて、ベルファーム内も少し散策。
これからバラの二番花が見頃を迎えるらしい。
隅々まで手入れが行き届いていて、きれいな花が楽しめる。入場料が無料って申し訳ないほど。
最後に、ベルファーム内のお土産屋さんと産直市場にもお邪魔して、長く溜まっていた旅行欲がすっかり満たされてしまった。
小旅行はすぐそばに
この一年、お正月休みも、GWも、お盆休みも、どこへ出かけるということもなく過ごしてきた。他県に実家があるけれど、そちらへももう一年以上行っていない。
県内ももちろんとても楽しいのだけど、やっぱり「遠くへ行きたい」は時々むくむくと顔を出す。
日常を忘れるような場所に足を踏み入れて、また日常に帰っていく、あの瞬間が恋しくなる。
今回、竹林を始めとする美濃田地区を散策した。見事な竹林と、静謐な大仏殿。おいしいおうどんを頂いたあと、お花を見てお土産を眺めて帰ってきた。
短い時間だったけれど、ぎゅっと凝縮された旅のような、贅沢な時間だった。
つるっと潤うような気持ちを胸に、日常にただいまを言う。そんな瞬間が恋しくなったらぜひ、訪れてみてほしい。
松阪インターを降りてすぐ。小旅行が待っている。
美濃田竹林街道
住所:松阪市美濃田
駐車場:松阪農業公園ベルファーム 東側駐車場をご利用いただけます。
HP:https://matsusaka-info.jp/spots/detail/minotachikurin.html
美濃田大仏【大仏殿と真楽寺と敏太神社】
住所:松阪市美濃田町950-1
HP:https://matsusaka-info.jp/spots/detail/minotadaibutsu.html
手打ちうどん美ノ田
住所:松阪市美濃田町894−1
松阪農業公園ベルファーム
住所:松阪市伊勢寺町551−3
電話:0598-63-0050
ホームページ:https://www.bellfarm.jp
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